正林寺御住職指導(R8.8月 第271号)
盂蘭盆会を迎える時期に御経回りがあります。家庭に僧侶が訪問して、自宅に御安置の御本尊に読経・唱題をして先祖を供養させていただき、家内安全、一家和楽、法統相続を御祈念する法要を御経回りといいます。御経回りを寺院に願い出られ、日取りを決めるところからはじまります。
御経回りは、御盆経とも棚経ともいいます。正しい先祖供養の在り方を子供や孫へ日蓮正宗の法華講に伝わる日蓮大聖人の仏法を教える大切な機会になります。
僧侶が自宅を訪れるにあたり、多くの家庭では前もって仏壇や仏間を家族総出で掃除し、清めます。日頃なかなか手が回らない箇所にも心を配り、御供養や果物などのお供物を整え、御樒(おしきみ)も新しくいたします。自身の身口意の三業を清めるためにも大切な準備となります。
この準備そのものが、実は御経回りの大切な意義の一つであります。御本尊を御安置申し上げる御宝前を家族皆で清めるという行為を通して、日頃の信心を見つめ直し、御本尊への御報恩の思いを新たにする機縁となるからであります。掃除という何気ない作業の中にも、真心からの御給仕の精神が息づいております。
読経・唱題を終えた後には、僧侶を交えての語らいの時間が持たれることも多く、これは日頃の寺院参詣ではなかなか伺うことのできない貴重な機会となります。
信心の悩みや仏事に関する疑問、日々の生活の中で直面する様々な事柄について、僧侶に直接、尋ねすることができるのも、御経回りならではの利点であります。大勢が集う寺院での法要とはまた異なり、家庭という身近な場だからこそ話せることも多くございます。この座談会的なひとときが、一人ひとりの信心をより深いものへと育んでまいります。
まさに、法統相続・子や孫への信心育成の機会となり、御経回りには、もう一つの大切な意義であります。それは、正しい先祖供養の在り方と、日蓮正宗の法華講に伝わる日蓮大聖人の仏法を、子供や孫の世代へと伝えていく機会になるということであります。
僧侶が実際に自宅に見えて、御宝前で読経・唱題をさせたいただく姿勢を目の当たりにすることは、次代を担う子供たちにとって、何よりの生きた育成となります。言葉で説明する以上に、実際の信心の姿を身近に拝見することが、子供や孫の心に信心の種を植える大きな縁となります。
このようにして家庭の中で信心が受け継がれていくところに、法統相続の確かな実現があります。御経回りは、一軒一軒の家庭にとって、まさに信心の絆を次世代へとつなぐ大切な機会なのであり、令法久住・広宣流布への大事な家庭での毎年行う行事となります。
宗祖日蓮大聖人は『四条金吾殿御返事』に、
「今年七月の盂蘭盆供の僧膳にして候」(御書1501)
と仰せであります。御経回りの御盆経は七月から始まり、八月の盂蘭盆会前までに行われます。盂蘭盆会の期間中は寺院に参詣される方に対応するため盂蘭盆会法要前までに御経回りは済ませます。
寺院での盂蘭盆会法要は、御経回りに訪問いただいた御礼を寺院の御本尊へ御報恩謝徳申し上げる意義もあります。盂蘭盆会の法要では「盂蘭盆供の僧膳」という意義から、精霊台に精霊膳をお供え申し上げ御先祖等を供養いたします。
本宗では古来から「常盆・常彼岸」といわれ、毎日行う朝夕の勤行では先祖供養を行います。さらに格別に、御経回りでの御盆経と寺院での盂蘭盆会に参詣して御塔婆を建立することにより、御先祖へのさらなる供養になり絶対的幸福を施すことになる大事な行事であります。
御経回りには以上のように大切な意義がございます。さらに、日蓮正宗では他宗と異なる唯一の意義が御経回りにはあります。
御法主日如上人猊下は、「法華講連合会 第30回少年部大会」の砌に、
「改めて『立正安国論』を拝し、その御教示にしたがって、一人ひとりが断固たる決意と勇気ある行動をもって、一天広布へ向けて大きく前進していくことが、最も肝要であります。また急務でもあります。このことを我々一人ひとりが心得て、いよいよ老若男女、力を合わせてたくましく前進されますよう」(大白法 第1178号 R8.8.1)
にと、御指南あそばされております。当宗である富山の蘭室の友に交わるため『立正安国論』の意義のもとに御経回りは行われることであります。
御経回りが、御先祖の供養にとどまることなく血脈相承あそばされた御法主上人猊下の御指南を根本とした御経回りに、折伏成就へとつながり仏国土実現への大事な一歩となります。
御法主上人猊下は「老若男女、力を合わせてたくましく前進されますよう」にと、御指南なされましたが、その「老若男女」に、法統相続・子や孫への信心育成の機会という重要な意味が存します。この老若男女とは、「老若」は老人と若者、「男女」は男性と女性を指しますが、一家和楽の信心を築くための大切な意義が存します。
8月は、9月の折伏強化月間に向けての準備期間であります。その先駆けとして、5月と6月に法華講講習会が開催されて行学を錬磨させていただき、また各部研修会と少年部大会で次世代への折伏意識を育成されます。講習会等での大切な内容が繁栄された折伏強化月間へと準備を整えてまいりましょう。
最後に、このたびの令和8年熊本地震にて尊い命を亡くされた方々の御冥福を衷心より深くお祈り申し上げます。被災された方々に対しましては、心よりお見舞い申し上げさせていただき、一日も早く平穏な日常生活へと回復されますよう、衷心よりお祈り申し上げます。
宗祖日蓮大聖人『中興入道御消息』に曰く、
「過去の 父母も 彼の そとば(卒塔婆)の 功徳によりて、 天の 日月の 如く 浄土を 照らし、 孝養の 人 並びに 妻子は 現世には 寿を 百二十年 持ちて、 後生には 父母とともに 霊山浄土に まいり 給はん 事、 水 澄めば 月 映り、 つゞみ(鼓)を 打てば ひゞき(響き)のあるが 如しと をぼしめし 候へ 等 云云。
此より 後々の 御そとば(卒塔婆)にも 法華経の 題目を 顕はし 給へ。」(御書1434)

